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幅 : 6.1cm 高さ : 4.5cm
清澄な乳白釉の中に、古代の象徴文様を思わせる「酉(とり)」の刻文が浮かび上がる本作は、九代 高橋道八様による「十二支ぐい呑」シリーズの一作です。均整の取れた造形と精緻な線刻、そして静謐な釉調が一体となり、京焼の伝統と現代的感性を見事に融け合わせています。以下、五つの観点からその魅力を紐解きます。
器形はやや広口の碗形で、口縁に向かって自然に開くラインが清々しい印象を与えます。胴部はふくよかに膨らみ、高台へ向かって穏やかに絞られており、掌に納めたときの安定感と心地よい重量バランスを兼ね備えています。高橋道八様らしい精緻な轆轤技術が、柔らかさの中に端正な緊張を漂わせています。
全体を包む乳白釉は、やや厚みを持たせた施釉で、柔らかく光を反射しながら穏やかな艶を放ちます。表面には細やかな貫入が走り、長年の使用により茶や酒が染み入ることで、時を重ねるごとに景色が深まってゆきます。高台付近にはわずかに胎土の赤味がのぞき、白の中に温もりを添えています。
口縁下をぐるりと巡る刻文は、抽象化された「酉(とり)」を表す意匠です。規則正しく並ぶ形は、翼を広げた鳥を思わせ、飛翔・発展・吉兆の意味を内に秘めています。古来、酉は「取り込む」「実りを収める」と通じ、商売繁盛や豊穣の象徴としても親しまれてきました。本作では、その象徴性を端正な連続文として昇華し、静寂の中に生命の律動を感じさせます。
刻文は乾燥段階で一筆ずつ丁寧に彫られ、釉薬がその凹凸に沿って自然に溜まることで、浮彫のような柔らかな陰影を生み出しています。釉の厚みと収縮を精密に制御することで、刻文が釉中に沈むことなく、立体的に際立つ仕上がりとなっています。均整の取れたリズムと確かな技術が、造形と装飾の完全な調和を実現しています。
干支文様は古代中国に源を発し、日本では平安期以降、守護・吉祥の意匠として建築や調度、陶磁にも取り入れられました。とりわけ「酉」は、神事や祭具にも用いられる神聖な象徴であり、時を告げ、福を呼ぶ存在とされます。九代 高橋道八様は、この古典的象徴を現代の美意識のもとで再構築し、華やぎを抑えた簡素の中に深い精神性を宿しています。
九代 高橋道八様は、服飾意匠の学びを経て平成八年に八代様に師事。平成二十四年に九代を襲名され、京焼の伝統を継承しながら、造形と意匠の融合を探求されています。
本作「ぐい呑 酉」は、白釉の静謐な世界に刻まれた連続文が、まるで羽ばたく鳥の群れのように生命の律動を奏でる逸品。掌に収まる小宇宙の中に、永遠と再生の祈りが静かに息づいています。
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